仮説実験授業研究会

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板倉研究奨励賞設定の趣旨   板倉聖宣

 昨1990年5月,多くの方々が私個人の還暦を祝ってパーティーを開いて下さいました。そのとき、さまざまな記念品を贈って下さった他に,多くの方々から寄せられた記念品代がかなり余ったということで50万円の現金をも下さいました。有り難うございます。そこで私は、その現金をもとに仮説実験授業の研究の発展のために何か効果的に役立てることが出来ないかと考えました。そして、いろいろと考えた末に、この50万円を基金として、それにさらに基金をも加えて「板倉研究奨励賞」といったものを設定するのがもっとも有益ではないか、との結論に達しました。
 仮説実験授業の研究は完全に在野的なものです。そこで、その仕事には、どこからも、何ら物質的な援助を期待することができません。ただ、その仕事は「子どもや教師の喜ぶ顔が見られる」という、何ものにも勝る報酬によって支えられてきたのです。しかし、多少の資金があったら仮説実験授業の研究をさらに効果的に進めることができるのに、と思われることも少なくありません。そこで、私は、少し余分な資金があったらもっと効果的に研究が進みそうだ、という人々の研究活動に,多少でも資金的な援助をしたい、と考えてきました。
 といっても、仮説実験授業の研究のように、まだ社会的には十分認められていない分野の研究活動の評価は、必ずしも容易ではありません。しかも、研究が完成した段階よりも、研究活動が本格化した段階で、資金援助をすることが大切です。そこで、私としては、かなり個人的な偏見が入るのを承知の上の賞を設定することが大切なようにも思えます。そこで、私は前々から、出来れば「多少とも公的で、しかも私一存で支出ができる資金」が欲しいと思っていました。その点、今回私が還暦記念としてお預かりした50万円は、うってつけの資金になりえます。そこで、そのお金を資金として、さらに似た性格の資金を集めて、少なくとも今後10年の間、「板倉研究奨励賞」といったものを設定することを考えた次第です。
 たとえば、年末の「板倉式発想法研究会」の収益など、これまで私がその収益金を受け取るのを躊躇してきたものがありましたが、今後はそういう種類の収入をも有り難く頂いて、少なくともその何割かをこの奨励賞の基金の中に繰り入れることにします。そうすれば、50万円の資金をもっと増やしていくことができそうだ、と考えたからです。幸い、昨年末の発想法研究会でも、多くの収益が得られましたので、すでに奨励金の資金を120万円に増やすことができました。そこで、とりあえず今後10年の間は、毎年1~2点の研究奨励賞を差し上げることが出来ると思います。もしも、他にも行き場のないお金があったら、この基金に加えてくださるよう、お願いします。
 これまで私は、このような「半ば私的、半ば公的な研究奨励賞制度」などというものを知りません。自分の名前を冠した研究奨励賞などというものを差し上げるのは、差し出がましいことのようにも思いました。しかし、ものは実験だ、と考えてあえて実施に踏み込んだ次第です。賞の設定範囲は、当面は「自然や社会の科学の教育を中心にした仮説実験授業の周辺」とだけしておきたいと思っています。何と言っても、賞の権威は、与える側ではなく受け取る側によって決まります。私は、はじめ「受賞者をどのように選定するか」について、公に多くの人々の意見を聞くことも考えましたが、「多くの人々の見るところの評価が安定してからの賞とするよりも、まだそこまでいかないような仕事をも応援するような賞にしたい」と考えて、私個人の主観的な評価を全面に出させていただくことにしました。ご了解下さい。とはいえ、私が気付かないことも沢山ありうるので、大いに推薦して下さるようお願いします。とても小さい賞ですが、「評価論をも自らの研究分野と考えている私」の実験を見守り、この「板倉研究奨励賞」が効果的に根ざすことができるよう、ご指導ご協力のほどお願いいたします。
※「第一回板倉研究奨励賞の贈呈 —その授賞理由—」(『研究会ニュース』1991年1月号)より

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